「祭祀主宰者」とは?

今回は、「祭祀主宰者(さいししゅさいしゃ)」について解説いたします。

1 言葉の意味・共同相続との違い等
聞き慣れない言葉だと思います。
これは、「系譜、祭具及び墳墓などの祭祀財産を管理する人」を意味します。
「系譜」とは家系図、「祭具」とは仏壇・仏具・位牌、「墳墓」とはお墓(お墓の所有権及び使用権)のことを意味し、これらをまとめて「祭祀財産」といいます。

よく勘違いされがちですが、この「祭祀財産」は「相続財産」とは異なる方法で承継されます。
簡単にいうと、故人の遺した「お金」は相続人達が相続分に応じて分ける(共同相続する)ことになりますが、故人の遺した「祭祀財産」は原則的に一人が承継することになります(例外もありますがその点は割愛)。
なぜかというと、祭祀財産(家系図や仏具、位牌等)を複数人で分けてしまうとどこにいったかわからなくなる(散逸する)可能性が高く、お金等の普通の財産と一緒に扱うことが国民感情にそぐわないとされているからです。

2 遺言による祭祀主宰者の指定
遺言によって、故人が祭祀主宰者を指定することができます。
つまり、「自分が亡くなった後、一番しっかり者の長男Aにお墓を管理してほしい。」と思ったとき、「祭祀を主宰すべき者として、長男Aを指定する」と遺言を遺すことができます。当該遺言を受け、長男Aはお墓を管理していくことになります。これが代々続けられることにより、日本の「家」制度が続いてきたものと思われます。

故人にとっても、自分が入ることになる「お墓」を誰に管理してもらうか、祖先(一族)を今後誰に守ってもらうかということは重要なことです。
残されたお墓の存する霊園を管理する主体(お寺や行政等)との関係においても、今後誰が祭祀主宰者(承継者)として振る舞うかということを指定する意味はあります。
相続人間において、「自分が祭祀主宰者(承継者)だ!」と争いにならないよう、祭祀主宰者を指定する方法があるということは、覚えておくとよいかもしれません。