宗教法人が行うペット供養について(法人税の観点から)

今回は、宗教法人が行うペット供養に際する税金の諸問題につき、2つの判例を紹介しつつ説明します。

1 ペットの供養と課税?

近年、ペットが家族の一員という飼主も増え、宗教法人に対し、ペット葬祭や納骨を求める事例も増えています。断る寺院もあれば、受け入れる寺院もあるようです。

その際、寺院側の側面から問題になるのは、

①ペット葬祭を行う宗教法人に法人税が課税されるか否か、

②ペット墓地やペット葬祭施設などの資産に固定資産税が課税されるか否か、

という点です。今回は①に焦点を当てて、判例等を紹介します。

(次回、②に焦点を当てたいと思います)

 

2 法人税の関係

(1)前提<宗教法人の法人税について>

まず、公益法人(宗教法人含む)は、収益事業を営む場合に限り法人税を納める義務があり、収益事業以外から生じた所得以外の所得については法人税を課さないと規定しています(法人税法4条1項、7条)。

つまり、「宗教法人が行うペット葬祭が『収益事業』にあたるか?」という点が問題になるのです。当該点が下記判例では問題となりました。

(2)最高裁平成20年9月12日判決

結論からいうと、

当該判例では、認定された事実関係を前提として、「ペット葬祭は収益事業にあたる」として、課税が相当である旨判断されました。

 

そもそも、法人税法が公益法人(宗教法人含む)等の所得のうち収益事業から生じた所得を課税の対象としているのは、同種の事業を行うその他の法人との競争条件の平等を図り、課税の公平を確保するという観点からです。

簡単にいうなれば、「株式会社としてペット葬祭をしているところもある。それらと比較して、単に『宗教法人』という名のもとにペット葬祭をしているがゆえにそこから得た所得に税金を課さないとすれば、株式会社として運営している法人との公平が図れなくなる!」というバランス感覚から、規定されています。

 

当該観点から、「財貨の移転が役務等の対価として行われる性質のものか、それとも役務の対価ではなく喜捨等の性格を有するものか、また、当該事業が宗教法人以外の法人の一般的に行う事業と競合するものか等を踏まえて判断する」という基準が導かれました。

 

この事案では、

【①ペット葬祭の料金表が存在し、それに基づき金員の移転があり、喜捨の性格を有しない。②ペット葬祭業の目的、内容、料金の定め方、周知方法等が、宗教法人以外の法人が一般的に行う同種の事業と基本的に異なるものではなく、競合するものと言わざるを得ない】

として、収益事業に該当するとして、課税は適法である旨判断されました。

 

なお、あくまで当該判断は、「この寺院の事実関係を前提とした」場合に、収益事業と判断されたものであり、「ペット葬祭=収益事業に該当する」と一律に考えることは乱暴といえるでしょう。

もっとも、「宗教法人であれば、その葬祭はすべて収益事業に該当しない」と誤解してペット葬祭等を扱ってしまった場合には、収益事業に該当すると判断されることもあるため、その判断は慎重になる必要があるかと思います

動物供養を行うに至った信仰の経緯宣伝広告対価の設定内容・授受等が重要な要素となるものと考えられます。

 

次回は、

②ペット墓地やペット葬祭施設などの資産に固定資産税が課税されるか否か、

という点につき、検討したいと思います。