「散骨」について

「散骨」とは、遺骨をお墓に納めるのではなく、海や山に撒くことを言います。自然葬ともいいます。散骨は、あるNPO法人団体が1991年に散骨を実施し、マスコミ発表することで世間に広まりました。

①散骨の違法性の有無

散骨は近年でてきた概念であり、法律(墓地、埋葬等に関する法律)には散骨自体について明確に定めた規定はありませんが、法的問題点は多数含まれています。

「節度をもって行えば違法ではない」とする法務省の見解のみを根拠として合法であると述べる方もおられますが、散骨の方法、場所、骨の形、分量等によっては、刑法の死体損壊罪(刑法190条)に該当することもあります。また、条例で散骨を制限(一律の禁止・場所の限定等)している地方公共団体もありますので、注意してください。

②散骨によって生じる第三者との紛争

散骨によって、故人・遺族にとどまらず、第三者との紛争が生じる可能性もあります。

例えば、海に撒いた場合、漁業関係者が風評被害を受けたとして散骨を実施した方を相手に損害賠償請求をすることもあり得ます。

また、現実に起きた紛争としては以下のようなものがありました。

NPO法人が有限会社Aを設立し、散骨上の経営を開始し、散骨希望者から申し込みを受け(永代供養料約50万円)、散骨を実施していました。その後、A社が所在する市町村が事実上の「散骨禁止」の条例を制定したことにより、A社が散骨ができなくなったことにより、散骨申込者がA社に対して債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟を提起した事案があります。

 

③散骨によって生じる遺族の精神的問題等

散骨「後」に生じる現実的な問題として、「遺族がどのように供養するのか?」という点があります。

よく、「自然に還りたいから、自分が亡くなったら全て海に撒いてほしい」という方がおられます。仮に撒くとすると、残された遺族は今後どこで故人を思慕するのか困惑することになります。このような点で遺族の精神的問題が生じる可能性があります。

海に撒くとしても、よくなされる手法は「船をチャーターして、岸から遠く離れた海上に撒く」というものです。では、遺族が故人を思慕するときに、毎回船をチャーターして散骨をした海上まで行くのかという金銭的な問題もあります。

 

故人の願いを実現することも大切かもしれませんが、「散骨」という方法が法律的な問題はもちろんのこと、遺族に精神的・金銭的問題を生じさせる可能性もあるという点を忘れずに、慎重に考える必要があるでしょう。